日々是愉快

ナリワイ絶賛模索中の専業主婦ブログ@東京

流産という経験 ③

少し間が空いてしまいましたが…前回に続いて。

「流産」が分かる日の前日。旦那氏の転職活動で見事に内定が出た。「よし、もう1社の結果次第だけど転職するぞーー」と旦那氏も私も久しぶりに笑顔になった日でした。
 
翌日の土曜は2週間ぶりの検診。もう11週頃だし、少しツワリも落ち着いてきた気がする。旦那氏の転職も決まりそうだし、みんなみんな良い方向に進んでいる。旦那氏は土曜出勤になりそうだけど、午前中の検診は一緒に行けるみたいだし、家族みんなで赤ちゃんの成長を見られる!そんな高揚感のあった夜でした。
 
翌朝。
 
最初の検診以来、久しぶりに旦那氏と息子と3人で検診に行きました。 相変わらず高級ホテルのような院内。土曜とあっていつもより夫婦で検診に来ている様子が多くありました。待ち合いでは、出産されて退院していく方々の姿も。生まれたばかりの小さな赤ちゃんを誇らしそうに抱っこしたキレイなお母さん達。そんな姿がとても微笑ましく、息子と「ママのお腹の赤ちゃんの写真も今日見れるよー」と話していました。 
 
そして私の順番。診察室へ入ると「それじゃあまずは超音波検査してみましょう」と私だけ隣の部屋へ入ります。機械が入ってすぐのことでした。
 
「赤ちゃんの心拍が止まっていますね」 と先生。
 
「へ?」
 
「残念ながら赤ちゃんの心臓止まっています。どうしますか?ご主人呼びますか?」
 
「‥‥はい‥‥」
 
モニターには確かに、ようやく人っぽい形をしてきた赤ちゃんの姿が映っている。でも、超音波の機械を入れるとすぐに響いていた「ドクンドクン」という心音が聞こえない。
 
「え?これってダメなの?赤ちゃんどうなるの?」
 
予期せぬ出来事に、頭の整理ができない。
 
「流産ってこと?この検査だけでわかるの?心音が小さいくて聞こえないだけじゃないの?」
 
よく分からないけど、涙だけ出てくる。
 
旦那氏と息子も部屋に入ってきた。
 
私は固まったまま2人の顔も見れない。
 
先生から「残念ですが、赤ちゃんの心臓が止まってしまっています」ともう一度告げられる。嫌に冷静に事実を淡々と話す先生。
 
状況を理解した旦那氏は何も言わずに私の頭を撫で、私の顔を覗き込んでびっくりした息子は「ママ、なんで涙?なんで?」と聞いてくる。
 
「今後の流れを説明しますので」と着替えて隣の部屋へ移動。
 
その後のことは、泣きすぎて断片的にしか覚えてないけど、
 
●初期流産は珍しくないこと
●手術をして心拍の止まった赤ちゃんを出してあげたほうが良いこと
●手術をするまでに1週間もあること
 
慣れたような一連の流れで、手術の書面も出来上がり、入院の日取りも決まっていく。
 
涙がどんどん溢れてくる。妊娠報告を喜んでくれたママ友、いつも気にかけている両親、体調に最大限配慮していくれる同僚‥‥。短い時間の間に、いろんな人の顔が頭に浮かんで、「私、赤ちゃんダメだった」と報告しなくちゃいけない自分の姿を想像して辛くて辛くて。
 
今思うと、私がずっと心配だったのは「私」。やっと妊娠した私、ツワリが辛い私、仕事もしなくちゃいけない私、息子のお世話をしないといけない私、旦那氏が不在にも耐えないといけない私。流産した私。
 
短い期間とは言え、私に宿ってくれたお腹の中のもう一人の人間のことを、どれだけ意識してあげられただろうか。
 
 
 
先生の説明を聞いた後、旦那氏と息子は待合室へ。涙でぐしゃぐしゃの私を、ハッピーモードに溢れる待合室にすぐに戻すのは酷だと思ったのか隣の部屋に移される。助産師さんも優しく声をかけてくださり、もう一度手術の流れを説明される。
 
さっきまで私がいた隣の診察室に次の妊婦さんが入ってきた。超音波検査。「はい、機械入りますよ」という先生の声とともに「ドクンドクン」と心臓の音が響く。「うん、赤ちゃん元気ですね。大きくなってますよー」。
 
聞こえてくるそんなやりとりにグサグサっと現実を突きつけられる。そうか、私の赤ちゃんダメだったんだ。
 
ハッピーしかないと思っていた空間で、こんなに幸と不幸が隣り合わせだなんて知らなかった。
 
助産師さんに「もう一度検査をして、赤ちゃんがやっぱり生きてたっていうことはありますか?」と聞いたけど、「手術前にもう一度超音波検査はするけど、心音が戻ることはないですね」と説明を受け、少し現実を受け入れたところで、待合室へ戻った。
 
少し落ち着いたとはいえ、泣きはらした顔で出てきた私を、周囲の人はチラチラっと見ている。早くこの場を去りたい。私だって、つい数分前まではそこにいる人と同じように、笑顔でお腹をさすっていた。
 
検診後は午後から出社するはずだった旦那氏。待合室に戻った私に開口一番、
 
「いま会社辞めるって言ったから」
 
「おぉそっか。そっか。そっか?」
 
「もちろん午後も会社行かないし、もう行かない」
 
多分そんな内容の会話でした。私が出てくるまでの15分くらいのうちに、旦那氏は勤めている会社を辞めていた。
 
つづく